キュービックジルコニア とは?

キュービックジルコニア とは?

  キュービック・ジルコニアは正確には”安定化等軸晶系ジルコニア(Stabilized Cubic Zirconia)”と、 実に奇妙な名称で呼ばれます。
前述のように1937年にジルコンの包有物として発見された微細な結晶がX線解析の結果、等軸晶系の酸化ジルコニウムと判明しました。
発見者はとりわけこの鉱物には注意を払わなかったようです。
このため単斜晶系の天然のジルコニアであるバッデリー石に対して、結晶系に因んでキュービック・ジルコニアと呼んだその無頓着な命名が以後定着してしまいました。
同じ化学組成の鉱物が温度や圧力の異なる生成条件下で結晶系や特性が変るのはダイアモンドと石墨、高温型と低温型の水晶等々、良くある事です。
酸化ジルコニウムの場合はこの違いが顕著に現れます。 
加熱の際には1180℃で単斜晶系から正方晶系に、さらに2370℃で等軸晶系へと移行し,2700℃で液相へと変化します。また安定剤として酸化イットリウムを加えた場合には1900℃前後で六方晶系の相が存在すると推定されています。
逆に高温から冷却される場合は2650℃で液相から等軸晶系へと移行し、1720℃付近では等軸晶系と正方晶系とが混在する相となり、1000℃付近で等軸晶系と単斜晶系の混在する相へ、840℃で単斜晶系へ移行します。

常温,常圧時には酸化ジルコニウムは単斜晶系で安定しますから、天然に等軸晶系の酸化ジルコニウムが存在する事は、特別な条件が必要となります。恐らく最初にジルコン中に発見された等軸晶系の微細な結晶は高温で生成したままジルコンの結晶中に閉じ込められてしまって、生成したときの結晶系が保たれた稀なる例と言えましょう。
  毎年膨大な量が合成されているキュービックジルコニアは、したがって、常温で安定させるために酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム等の物質を4〜15%程度添加しますから、ジルコニアというよりは、合成タジェナライト、または合成ジルケナイトと呼ぶべきでありました。   

 

合成キュービックジルコニア とは?

ジルコニアは常温では単斜晶系に相変化してしまいますから、敢えて,添加剤を加えて等軸晶系の結晶とするのは二つの理由からです。

 一つは等軸晶系の場合のモース硬度、8〜8?の値はルビー,サファイアに次ぐ硬さで、トパーズやスピネル,エメラルド等より硬く,宝石として理想的な耐久性があります。
単斜晶系の場合,モース硬度は6?と低く,宝石としては相応しくありません。

次は、ダイアモンドと同じく等軸晶系で複屈折がなく、さらに分散値もダイアモンドを僅かに超える値で見事なファイアーをみせるため、肉眼での識別が殆ど不可能なことです。

 GGGやYAG、チタン産ストロンチウム等、前の世代のダイアモンド・イミテーションと比較して,キュービック・ジルコニアはモース硬度,屈折率、分散等の基本的な特徴がダイアモンドに最も近く,究極のダイアモンド・イミテーションと呼ばれる所以です。

 そのため世界各地で合成への挑戦が試みられましたが,純粋なジルコニアの場合の2750℃と言う途方もない融点の高さが最大の障壁となりました。
添加剤を加えた場合には融点は下がりますが,しかし,もっとも高温に耐えられるイリジウムの坩堝でさえも2683℃が限度ですから、材料が溶ける前に坩堝のほうが溶けてしまいます。
  従ってそれまで他の宝石の合成に適用されてきた火炎溶融法、熱水法、フラックス法、等々いずれの方法でも合成は不可能でした。
  最初に合成に成功したのはフランスの科学者達で、坩堝を使わずに酸化イットリウムを12.5%添加して1969年に15mmの大きさの結晶を得る事が出来ました。

  しかし本格的な量産技術の開発に成功したのは当時のモスクワにあるソビエト科学アカデミーの物理学研究所で、酸化ハフニウムを添加し、スカル・メルティング(Skull Melting)と言う新しい合成技術を用いた合成法で1970年代初頭でありました。 
スカル・メルティングとは,下記の写真と図のように中空で中に冷却水の流れる銅管の壁の内部に材料を入れて4MHz,100kWの高周波電流で加熱する方法です。これによって3000℃の高温を得られ、材料を溶かす事が出来ます。壁の底面と周囲は冷却水を流して冷やされますから、冷えた固体となったジルコニアで覆われ、内側の材料が溶融して結晶が生成されます。
即ち材料自身を容器とする優れたアイデアです。結晶が合成された後に周囲の壁には白いジルコニアが付着して頭蓋骨のように見える事からスカル=頭蓋骨溶融法と名付けられとのこと。
  ソビエトではこうして出来た結晶を研究所の略称FIANに因んでフィアナイト(Fianite)と呼んでいます。

その後スイスのジェヴァヒルジャン社が同様の技術を用いて,ジェバライト(Djevalite)を、またアメリカのセレス社がCerene,その他商品名は、CZ,Cubic Z,C-OX,Diamonair、等々20余りの名称で市場にキュービック・ジルコニアが導入されました。 
  本格的な生産は1976年に始まりましたが,たちまち他の全てのイミテーションを駆逐し、1980年には6000万カラットに達し(うちファセットは1350万カラット)、現在では10億カラットと、ダイアモンドの10倍の生産量になっています。
  数量の増加につれて価格は劇的に低下し、当初はファセット石の卸売り価格がカラット当り40ドルでしたが,1980年には4ドルに、現在では1ドル以下になっています。

  主な生産国はロシア,スイス,フランス,台湾等で、日本では生産されていません。大電力を必要とするため,電力コストの高い日本では競争力がなく参入が阻まれていると思います。
  さらに、当初はレーザー等,産業用の光学素子として開発されたキュービック・ジルコニアですが,結局ダイアモンド等の代替が主な用途となっていますが,日本では合成宝石は全く需要がありませんから、日本のメーカーの進出が見られない理由でもありましょう。
  ただし、全くの偶然からキュービック・ジルコニアが室温から絶対零度に近い極低温までの温度帯で高温超伝導体とほぼ同じ熱膨張率を持つ事が見出されました。従って高温超伝導技術が実用化された暁には、その応力フリーの保持体として再び最先端技術の分野で脚光を浴びる事になるでしょう。

多彩な色のキュービック・ジルコニア

 

多彩な色のキュービック・ジルコニア 画像   色々なキュービック・ジルコニア 画像
    スカル・メルト法による結晶            多彩な色のキュービックジルコニア

                         

CZ ブルー 画像 CZ ライトブルー 画像 CZ ブラウン 画像
   サファイア色のジルコニア        アクアマリン色のジルコニア     イエロートパーズ色のジルコニア

CZ ピンク 画像 CZ ライトグリーン 画像 CZ グリーン 画像
 ローズクウォーツ色のジルコニア      ペリドット色のジルコニア        エメラルド色のジルコニア

CZ レッド 画像 CZ ホワイト 画像 CZ パープル 画像
 ガーネット色のジルコニア         ダイアモンド色のジルコニア      アメシスト色のジルコニア

 

究極のダイアモンド・イミテーションとして華々しく登場したキュービック・ジルコニアですから、
無色透明なものが大半です。
しかし添加物を加えてほぼあらゆる種類の宝石の代替として広汎な要請に応えられる多彩な色のヴァリエーションがあります。
添加物は一般的な鉄やクロム,マンガン等の他に様々な希土類元素が単独または複数、0.1〜2%程度加えられます。




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